『谷間のゆり』

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    若きフェリックス青年とモルソーフ夫人の、年の差をものともしない高き精神性
    によって結ばれた恋愛を描いた長編小説。

    高貴で美しいモルソーフ夫人を形容したタイトルにも掲げられた「ゆり」の花は
    同時に聖母マリアを意味する花でもあり、モルソーフ夫人に聖母のイメージが
    重なります。



    谷間のゆり (岩波文庫)谷間のゆり (岩波文庫)
    (1994/12/16)
    バルザック

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    人は自分の熱い思いを表現せずにはいられず、その情熱が込められた作品を
    人は芸術と呼ぶのだと思います。

    芸術として社会に認知されることのない、私的レベルの芸術作品は私たちの
    身近にもあるはず・・・

    何らかの作品は私たちの感情を上手く昇華させたカタチであり、創作は感情の
    発露なのだと思うのです。





    私はさっそく飛び出して行って、野原や葡萄畑でしきりに花を探しながら、
    彼女のために花束を二つばかり作り始めました。
    ところが、その花を一つ一つ摘みながら、根もとから折り取ったり、その美しさ
    に見とれたりしているうちに、私はふと、その色や葉の工合に一つの諧調、一つ
    の詩があり、それがあたかも音楽の楽節が愛し愛される人々の胸の底に無数の
    思い出を呼びさますように、眼を楽しませながら同時に悟性に訴えて来ることを
    考えました。
    色は光線を組み合わせたものであるとすれば、曲調の取り合わせにちゃんと一つ
    の意味があるように、色にも色の意味があるはずではないか?
    ジャックとマドレーヌに手伝ってもらって、三人とも愛する彼女をびっくりさせて
    やることを楽しみにしながら、私は玄関の石段の裾のところに私たちの花の本営
    を設けて二つの花束を作りにかかり、その花束によって一つの環状を描き出そう
    と試みました。


    フェリックスはモルソーフ夫人に自分の思いの全てを込めた花束を自らの手で作り、
    幾度となく贈りました。

    フェリックス、あたくしがどうしてあんな気の永い仕事を思い立ったのか?
    男のかたは、ちゃんと毎日のお仕事というものがあって、悲しみに耐えて行くすべ
    もおありですし、お仕事の忙しさで気がお紛れにもなりますわ。
    それが、あたくしたち女の身には、心のうちに自分の悲しみを支えるような足場が
    なんにもないのですもの。
    ですから、自分が悲しい思いにとりつかれて時でも子供たちや主人には笑顔を見せる
    ようにしようと思うと、あたくしどうしても何かからだを動かすことで、その悲しみ
    にちゃんとくくりをつけて行かなければだめだと思いましたの。
    で、そんな風にしていたお陰で、あたくし、随分気力を使い果たしたあとでも、そう
    ぐったりしてしまわないですみましたし、むやみにとりのぼせたりするようなことも
    ありませんでしたわ。
    いつも同じ間を置いて腕をあげさげする動作が、胸の思いをやさしくゆさぶってくれ
    ますし、暴風雨の渦巻いている心にも、潮の満干のようななごやかな動きが伝わって
    来て、だんだん興奮が静まりますの。
    あの刺繍には、それこそひと針ひと針にあたくしの秘密が打ち明けてありますのよ。
    それがどうでしょう、あの最後の肘掛椅子のおおいを刺繍しながら、あたくし、
    あなたのことばかり考えていましたの、ほんとに、随分あなたのことばかり・・・・。
    あなたがあの花束にこめて下すったお心を、あたくしはあの模様に向かって打ち明けて
    おいたのですわ。


    一方のモルソーフ夫人もフェリックスの花束にこたえて肘掛椅子のおおいの刺繍に
    思いを込めたことを打ち明けています。

    口から流れ出る言葉とは別に、創作によって編まれた作品もその人の心模様を雄弁
    に語る一つのことばなのですね。





    大切なのは話の筋だけではありません。

    小説の中にはひとりひとり違った多様な発見と楽しみがあり、私はそれこそが小説を
    読む醍醐味のように思っています。


    梅雨時にクラシックをお供にフランス文学などいかがでしょうか?







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